恥骨痛の部位と原因
恥骨とは、骨盤の前下部(股間の前側の骨)をいいます。
恥骨は、左右対になっていて軟骨と靭帯により恥骨結合を形成し連結しています。
恥骨、坐骨、腸骨は元々は別の骨ですが、14~16才くらいまでに癒合して、寛骨(かんこつ)骨になります。
図『恥骨、坐骨、腸骨の位置』では色分けしていますが、境目は実際には区別できません。
恥骨痛の原因
恥骨結合離開
骨盤は妊娠後期、分娩時に生理的に弛緩状態となりますが、恥骨結合軟骨が弛緩する際、その程度が過度であったり、巨大児の出産などで恥骨結合軟骨が損傷を起こしていると、著明な自発痛や圧痛を示します。歩行困難となる場合もあります。
診断は、医療機関でのレントゲン撮影(立って撮影と寝て撮影)によります。
通常のレントゲン撮影で恥骨結合の離開が認められない場合でも、立って片足を上げた状態でレントゲン撮影すると恥骨結合の離開・ズレが認められます。
また、妊娠から出産にかけて緩んだ骨盤は、出産後約6週間で硬くなります。
仙腸関節可動制限
下図は歩行時の骨盤の動きをイメージしています。
出産後、ゆるんだ骨盤が元に戻っていない状態で、仙腸関節に可動制限があると、動作時に恥骨結合離開や捻れるテンションがかかり炎症が悪化して痛みが強くなります。
中殿筋の弱化と腰方形筋の過緊張
中殿筋の弱化と腰方形筋の過緊張が原因で恥骨結合離開の負荷がかかることも考えられます。
股関節内転筋の過緊張
股関節内転筋の収縮は恥骨結合に離開の負荷がかかります。 恥骨結合が健康な状態なら問題ありませんが、恥骨結合まわりの靭帯などが傷んでいると股関節内転筋がその傷んだ靭帯を引き伸ばすため痛みを発します。
股関節内転筋炎
股関節内転筋(股の内側の筋肉)の炎症です。
鼡径ヘルニア
腹壁が弱まり腸が飛び出してくる(脱腸)疾患で、立っていきんだときに鼡径部に膨らみが出てきます。
医療機関での治療が必要です。
骨盤内臓器
前立腺炎、子宮筋腫、尿道炎、生理痛、閉鎖神経または陰部大腿神経の絞扼など、
ほかに大内転筋トリガーポイントの関連痛の可能性があります。
医療機関での治療が必要な場合があります。
恥骨痛の整体
検査
痛む部位や状態に応じて必要な検査をおこないます。
痛む部位の確認
痛む部位は骨格模型で確認します。
恥骨結合の可動検査
側臥位で恥骨結合の可動検査を行います。恥骨結合の可動検査と可動性が無い場合の矯正は同じ手技になります。
仙腸関節の可動性検査
座位、立位、仰臥位、伏臥位、側臥位で仙腸関節の可動性検査を行います。
股関節の骨頭変位の検査
仰臥位で膝を立て屈曲方向に押し股関節の可動制限、遊び、膝の高さの左右差を確認します。
可動制限のある側が変位している股関節で、膝の高さが高ければ骨頭の前方変位、低ければ骨頭の後方変位の可能性があります。
股関節は骨盤や腰椎の歪みの影響を受けますのでこの検査だけで骨頭変位は確定できません。
関連する筋の圧痛検査
恥骨痛に関係する筋の緊張や拘縮を確認します。図の黒点のあたりを押します。
関連する筋の筋力検査
(例)
筋力検査では力の入り具合や痛みなどを確認します。
施術
※施術は六層連動操法、カイロプラクティック、神経筋反射を利用した手技にて行います。直接筋肉を揉んだりしません。
矯正技術の詳細は、受講したセミナーの内容を公開してしまうことになるため記述しません。ここでは『どんなことをされるのか?』不安な方のために施術の雰囲気と施術理由などをお伝えしています。恥骨痛の整体は、恥骨結合離開、股関節内転筋炎、トリガーポイントの関連痛など症状に応じて、
仙腸関節の可動性改善、股関節の骨頭変位の矯正、股関節関節包からの侵害反射の解除、腸腰筋、中殿筋、腰方形筋、股関節内転筋群などの弛緩または筋力向上などを行います。
左右の寛骨は恥骨結合と仙腸関節でつながっています。
恥骨結合離開がいつまでも治らない場合、骨盤の後ろにある仙腸関節が楔のようになり前側の恥骨結合を開いていることが考えられます。
恥骨結合離開が考えられる場合、回復するまで骨盤ベルトやトコちゃんベルトなどで恥骨結合を支える必要もあります。
股関節の骨頭がずれることで股関節を動かす筋に余計な負荷がかかり炎症をおこしたり、体重が本来と異なる部位にかかり予想できない障害を起こすことも考えられます。
股関節内転筋が拘縮することでその筋自体が炎症をおこしたり、協力筋や拮抗筋に余計な負荷がかかり障害を起こすことが考えられます。
また、股関節内転筋が緊張するか外転筋が弱化すると、立位など脚が固定される体勢では恥骨結合を開くテンションがかかります。